建築とは「状況」である。それは建物が都市や町、地域と一体となった風景である。私はただモノとして建築を作るのではなく、周囲を巻き込みつつ、他者に影響を与え、そして建築も人も営みも、それらを全部包み込むような大きな空気の塊を設計したい。それは建築という形を表現するだけの行為ではなく、建築というリソースを使って「現代」という時間を刻印する行為となろう。
そして「状況」を各地域の中で建築していくために大切なことは、その地域の「社会資本」が何かを見つけ出すことである。多くの地域は自分たちの魅力、つまりその場所に基から存在する大切な「社会資本」に気が付いていない。近すぎて自分達自身の資本が何であるのか、見えなくなっているのだ。その中、現代の建築家は自身の職能をもって、気付かれていない社会資本を見抜き、その地域に伝えねばならない。そしてその大切な社会資本を活かす形を、建築でもって現さねばならないと、私は考えている。
遠藤克彦