片岡 大貴

日常の中で散歩をする時間が、何よりも好きです。目的地へ最短距離で向かうのではなく、ふと思い立って路地裏に入り込んだり、街の風景が移ろう様子を眺めたり。時間をかけてゆっくり歩くことで初めて気づく、日々の暮らしの息遣いや、街に積み重なってきた歴史の気配。そうした小さな発見を拾い集めることが、私の日々の糧になっています。
世の中は常に効率やスピードを求めて動いていますが、私はそんな時代だからこそ、意識的に立ち止まることを大切にしたいと考えています。急いで結論を急ぐのではなく、物事の背景にある文脈を読み解き、細部まで丁寧に確認しながら進んでいくこと。一見すると遠回りに見えるかもしれませんが、一つひとつを慈しむように向き合う時間は、人とのつながりやものごとを深めるために欠かせないプロセスだと信じているからです。
私にとって、ものづくりや日々の仕事は、人との関わりの中で物語を紡いでいくような感覚に近いです。数値や理屈だけで解決するのではなく、そこにいる人がどんな心地よさを感じ、どんな空気の中で過ごすのか。そうした想像力を何よりも大切にしながら、使う人の目線に立って、丁寧に対話を重ねていきたいと思っています。
完成を目指してただ走り抜けるのではなく、その過程にある偶然の出会いや気づきを大切にしながら、長く愛されるものや場所を育てていく。散歩者のような好奇心と、丁寧さへのこだわりを忘れずに、これからも自分らしい歩幅で、街や人と向き合い続けていきたいです。急ぎ足で通り過ぎるだけでは見えない、豊かな景色をこれからも大切に味わっていきたいと思っています。