八ヶ岳の麓、標高1700 メートルの別荘地にこの建物は計画された。敷地は東南東に向かって緩やかな傾斜で下っており、周囲一帯は白樺林と笹で覆われ、別荘地であるにも関わらず鬱蒼とした敷地環境である。
建物はいくつもの直方体を重ねたりずらしたりしながら、傾斜に沿って敷地の奥へとデザインされている。各々の直方体ヴォリュームには独立した機能が収められており、エントランスボリューム、LDK ヴォリューム、サニタリーボリュームなど、各スペースごとに特色をもって各箱をデザインしている。閉じた箱としてデザインされたエントランスに入ると、数段の高さの違いによってLDK のヴォリュームが目に入る。シークエンスを持って、来訪者の意識を奥へ奥へと導くような視線の先には、開放的な、高さ4ｍのリビングスペースが広がっている。周囲で目に入るのは木々のみである。
良好な自然環境を十分に生かし、かつ、標高1700ｍという厳しい天候にも耐えうる設備性能を備えることで、この開放的な建物は四季を通じた利用が可能となった。新緑も、そして一面の銀世界をも、リビングの中に導くデザインとなったと考えている。