本提案は現在西区が抱えている社会的背景、および今後の少子高齢化から変化する時代要求を「コンクリートと木のコラボレーションによる建築」で解決できないか試みたものである。
計画案当時、西区はマンション建設数の増加に伴い、子育て層の人口が急増していた。新たに引っ越してきた住民や住居の高層化によって地域との繋がりが希薄化し、さらに地域コミュニティの衰退が進むと懸念されていたのである。そこで私達は「デイケアセンター+育児支援サービス付の高齢者住宅」を作ることで、昔ながらの地域ぐるみで子供の成長や安全を見守る環境づくりが生まれる事を目指した。またそれは子供達にとっても、地域に根ざした遊びや伝統的な児童文化を知る良い機会になると考えた。
建物の構造は無駄がなく可能な限りシンプルに、コンクリートのラーメン構造とする事で建物として必要な耐震性、耐火性、耐久性を満たしている。内部は居住者の心が落ち着く木質空間にてつくり、住人の生活スタイルや将来的に予想される多様な要求に耐えうる構成としている。各住戸が規格サイズの木でつくられ、改修や材料の再利用が容易な仕組み、また床下に配管の取り回しに十分なスペースを確保する事、さらに耐火壁を移動させる事でよりフレキシブルな可変システムを可能とした。
各々の木住戸は、適度な距離をおき配置する事でお互いのプライバシーを保つ。共有スペースは外部環境をコントロールした快適な半屋外環境であり、また高齢者が住戸から出て活動を促す空間となる。温熱環境的にも木住戸が入れ子構造となり、コンクリートと切り離して断熱する事で、個別制御の空調が可能となりエネルギー負荷を低減している。
私達はコンクリートの特性を活かしたシンプルな構造と木の特徴を活かした可変性のある住戸システムの構築が持続可能な建築に繋がり、それを高齢者と子供達の接点に据える事で、地域住環境に良い影響を及ぼすと考え、提案した。