敷地は、JR軽井沢駅のほど近く、旧軽井沢雲場にある。この別荘地はもともと1つの広大な敷地であった。初めて敷地を訪れた時にまず感じたのは周囲の静けさだ。しかしながら、同じ時期に始まった周辺別荘群の建設によって、いやがうえにも別荘地全体の密度は高まっていくであろうことは予想された。そのような敷地のコンテクストの中で、別荘建築として必要とされたのは、最初に感じた静けさをどのように確保していくか、ということであった。
建物はそんな敷地を「帯」のように切り取るよう配置されている。周囲の配置コードと全く違うジオメトリーでデザインされた建物は、持ち上げられたフロアの効果とも相まって、周囲の建物と正対することなく、稀な視界範囲を手にすることが出来ている。いうなれば、別荘地が通り過ぎていく時間軸を現時点でどのように考えておくか、というデザインであったと言える。
また、建物は周囲の自然を積極的に内部まで導くことが出来るように、意図的に映り込みや反射を期待して素材等を選択している。床材として用いたタイルや、ガラスによって延々と続くように見える天井には周囲の自然が映り込み、実像と虚像の両方の自然を満喫できるようデザインされている。