山手線から周囲へと伸びる私鉄沿線にある住宅地の中に、この三世帯の集合型住宅はある。計画はクライアントの指示によって「３階建てが可能であること」という条件に合う敷地を探す段階からスタートした。法規制的に厳しい第１種低層住居専用地域での建築計画であり、建築ヴォリューム的にも日影制限等を受けることが予想されているため、敷地選定は非常に難航した。当該敷地は北側６ｍ道路という前出の条件的にも非常に目的に叶ったものであり、ヴォリューム検討を行った上での土地の購入、そして設計開始となった。
全体の機能として要求されたのは、４〜５台駐車可能なパーキングスペース、各階で独立した住居体系を営めること、２階にはL・D・K、そして２つの寝室が１フロアにバリアフリーにて設計されること、かつ、無用に柱は大きくしたくないということ、そして、３階には十分な明るさをもつデッキスペースとそれに繋がるサブ住居スペースであった。この全ての機能要求を叶えるために計画されたのが、鉄骨造による吊り構法である。
この構法は、一列に並べられた主柱よりブレースによって吊り下げられた２階床・３階床を、周囲の壁面にて振れ止めとする構法で、この方法によって２階の室内には吊り下げている鉄骨のロッド（鉄の角棒、32mm角）が見えるのみとなっている。これはサッシュの見つけ幅の約半分であり、ほとんど構造が存在してないような印象を与えることが可能となった。また１階のパーキングスペース部分は吊り構造によって構造躯体は全く必要とならないため、予定通りの駐車スペースを確保することが出来ている。また建物の振れ止めとして計画された外周鉄骨柱は、そのまま外部を覆うガラススクリーンの支えとなり、都市住居として、しっかりとしたプライベート空間を確保するための重要な仕掛けとなっている。