伊豆半島の先端、下田市に建つクリニック兼住宅である。敷地は商業地と住宅地の混在する地域にあり、前面道路の交通量も多く、どのようにクリニックとしてのプライベート性を保つかが、計画を進めて行く中で重要な鍵となった。そしてこの建物でデザインしたのが、幾重にも重ねられたガラスサッシュによる居室の階層的配置と、視線をコントロールするためのルーバー壁であった。
クリニック機能の性格上、待合いスペースを含め、プライバシーは確保されなければならないが、クリニックも商業施設として考えると、外部からもある程度の「視認性」は必要である。この二つの相反するデザイン要求を、ガラスの反射とルーバー壁による視線コントロールにて両立させた。
また、1階のクリニック待合室の吹き抜けは2階住宅部分のリビングと共有されており、お互いに使用していない時間帯でもスペースを有効に利用できるよう計画している。吹き抜けにはリビングから利用できるガラス・テラスが計画され、開放感ある吹き抜け空間を演出している。また、吹き抜け空間は室内熱環境的にも有効に機能し、夏の暑い空気を上部へと逃がす役目も担っており、デザインと熱環境への配慮を同時に行った計画となっている。